米澤穂信『犬はどこだ』
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/07/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書の場合はもっと単純で、日々の糧を得んがために職業としての探偵業にいそしまねばならないのだ。これは他作品の主人公が学生であるのに対し、本書の探偵役が社会人であることに起因する。
物語は失踪女性の捜索と古文書解読という二つの依頼をこなすことによって進んでいく。一見無関係と思われた二つの捜査が偶然にも関わりを持っていき、最終的な解決ということになるのだが、基本的に仕事としての探偵であるためこの「解決」は事務的で、正義感や人道的配慮とは著しくかけ離れたところにある。かといってこの主人公がビジネスライクに徹した冷たい男というわけではなく、彼に感情移入しにくかったり反感を抱くことはさほどないであろう。このあたりの人物造形のバランスの取り方は非常に上手い。