桜庭一樹『GOSICK? 愚者を代弁せよ』

 シリーズ第四作は、学園に存在する時計塔でかつて起きた密室殺人事件の謎に挑む話。ヴィクトリカはここではじめてアブリルと邂逅することになる。「灰色狼の子」と周囲に危惧されているヴィクトリカのこれまで関係した人物というと、身内のブロワ警部や学園内でのお目付け役ともいうべき教師のセシル、あるいは彼女の解決した事件の関係者といったところで、友人と呼ぶべき人物は唯一の例外・久城一弥以外には存在しなかった。したがってその例外を除いて14歳の少女相応のともいえる友人たちとのやりとりとはほとんど無縁であった。そのヴィクトリカがはじめて同年代の少女と触れ合う機会が訪れた。そのアブリルが恋敵ともいえる存在であるゆえ対応が喧嘩腰になるのだが、14歳の少女に相応しい不器用さで友情らしきものをはぐくみつつある。これは明らかにヴィクトリカの成長イベントというべきもので、単なるシリーズキャラクターによるライトなミステリとは切り捨てがたい厚みを物語りに与えていることに注目したい。
 ……などという分析は、本書を読むに当たっては野暮の極みというべきで、恋敵に出会ったヴィクトリカの反応をニヤニヤしながら読んで、ヴィックヴィクにさせられればいいと思いますです。