鳥飼否宇『太陽と戦慄』

太陽と戦慄 (ミステリ・フロンティア)

太陽と戦慄 (ミステリ・フロンティア)

 2004年10月購入。3年半の放置。宗教的な思想を抱き、時にテロ活動すら辞さない導師と名乗る男に拾われ、育てられた少年少女たち。彼らはそれぞれ心に問題を抱えていたのだが、導師の教えによりどうにか立ち直りを見せた。その導師の指導で結成した音楽バンドの初ライブ終了後、導師は何者かに殺された。さらに10年後、導師の作詞した歌詞を想起させる事件が起きる。そして周囲には当事のバンドメンバー立ちの影が……
 宗教めいた胡散臭い集団での出来事が語られ、しかももうひとつ別の新興宗教が登場する、という内容で読み手はある種の色眼鏡をかけて本書を読み進めることになるであろう。だが、その色眼鏡を外すことによって見えてくるものがある。それはバンドメンバー、特に語り手である越智啓示という少年の風変わりな青春ものだということだ。爽やかさとか切なさ、ほろ苦さや甘酸っぱさとは無縁なざらついたものではあるが、青春小説の亜種であることは、間違いないであろう。