歌野晶午『密室殺人ゲーム王手飛車取り』

密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社ノベルス)

密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社ノベルス)

 2007年1月購入。1年3ヶ月の放置。ネット上で知り合った5人の人間が持ちまわりで推理ゲームの出題をしている。ただし、この推理ゲームは単なるゲームではなく実際に起きた事件を扱っており、しかも出題者こそがその犯人であった。昨今ではネット世界の内/外の境目が理解できない若者が起こした事件、などという安直な識者の見解が散見されるのだが、そういった安易な現代的病理を描くことは作者の意図するところでない。あくまで本格ミステリ作家としてネット社会を舞台にした本格ミステリを執筆してみたにすぎない。なるほど起こる事件の数々は、現実で起きてもおかしくないような類のものだ。だが、本書の主眼としておかれるところは本格ミステリ的な仕掛けであって、投影されうる現実の問題ではない。その意味で極めて本格ミステリ的作品であるといってよい。