三雲岳斗『聖遺の天使』
- 作者: 三雲岳斗
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2003/10
- メディア: 単行本
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基本的に用いられているトリックは現代的視点からみるとたいそうなものではない。しかし、神学が主流であり近代科学の思想が未だ行き渡らない時代を舞台にすることで、これらのトリック及び真相の意味は大きく変わってくる。
そもそも視点人物となるチェチリアは聡明な女性である。しかし、その聡明さは近代科学の知識を有さない、神学世界に生きる人物としての聡明さにとどまる。したがって、作中で起きる奇妙な出来事すべてに神の意思を感じざるを得ず、探偵役にはなりえない。しかし、探偵役のレオナルド・ダ・ヴィンチこそはこの中世的常識の枷から逃れ、近代科学の思想でもって謎を解き明かしていく。
本書の謎とその解明の構図はこの時代、この探偵役であってこそ成立する。歴史ミステリとしては非常によくできているといえよう。