弘也英明『厭犬伝』

厭犬伝

厭犬伝

 2007年11月購入。5ヶ月の放置。架空の世界を舞台としているのだが、ベースとなっているのは日本風のテイストとなっている。この世界では人間の骸から生えた「汚れ木」で作られた「仏」という操り人形を用いて戦わせる「合(あわせ)」という遊戯がある。
 主人公の厭太郎は仕事上の過失によって仏師を死なせてしまう。そしてその罪を問われるのだが、仏師の娘・犬千代と「合」を行い、勝てば不問、負ければ死の二択を迫られることになる。「合」の腕前はヘボといってもよい厭太郎はどうにかして犬千代に勝たんと修行を積むことになるのだった……
 ストーリーの大半はこの「合」に関する話題で占められるのだが、この「合」なるもの、そして合戦の描写はまるっきり格ゲーそのもので、作者のゲーム脳っぷりがうかがえる。帯で米光一成は「ゲーム化熱烈希望!」などと謳っており、設定はなるほど、その類の魅力はあるのだろうが、肝心の小説作品として昇華できているかというとはなはだ疑問で、対戦相手の攻略法に関する記述はまるっきりゲームのそれに過ぎず、登場人物の掘り下げも甘い。レベルの非常に高い「ファンタジーノベル大賞」受賞作品ということで期待値は非常に高かったが、完全に肩透かしに終わっており、残念だ。