ジョン・コリア『炎のなかの絵』

炎のなかの絵 (異色作家短篇集)

炎のなかの絵 (異色作家短篇集)

 2006年3月購入。2年1ヶ月の放置。全20編という多数の短編が収録されているのだが、夫婦間での対立、それもどちらかの一方的な被害妄想・不満・いらだちからもたらされるものを扱った作品がやけに多い。「記念日の贈物」「ある湖の出来事」「保険のかけ過ぎ」などはその典型で、他にも「旧友」「クリスマスに帰る」「カード占い」のような変奏曲、さらには対立とは呼べないまでも男女関係に絡む何らかの緊張感を感じさせる「夢判断」「ロマンスはすたれない」などを含めるとこの作者の執筆テーマにおける興味の対象、あるいは本書の編者の意図するところが非常に明白なものとして現れている1冊といえよう。一本筋の通った短編集であるのだが、反面、同工異曲が多いという穿った見方もできうる。一気に読むよりチビチビと進めていくほうが吉。