田中哲弥『ミッションスクール』

ミッションスクール (ハヤカワ文庫JA)

ミッションスクール (ハヤカワ文庫JA)

 2006年5月購入。1年10ヶ月の放置。ライトノベルのメインストリームともいうべき「電撃」レーベルの雑誌「電撃hp」に掲載するも読者からブーイングの嵐で出版もままならなかったものの、SFの総本山ともいうべき早川に拾われたという経緯をもつ怪作にして快作。
 収録されている5つの短編は学校を舞台としており、当然学生が話の中心となる。ところがその登場人物の言動が規格外である。表題作「ミッションスクール」の冒頭には「下痢のため一刻も早く排便したいのです」などとのたまう美少女が登場するし、続く「ポルターガイスト」では「個々の人間の恥の意識が大音響となって表出する」などという面妖な呪いが登場し、「あたしさっき生理はじまっちゃった!」「おしっこ漏らしちゃったーっ」などという叫びとともに爆発が巻き起こる。
 かように、意識下でヒロインは清純であるべきだ、などという処女信仰を信奉するような読者の反感を買うかのごとき作風が5作。嫌悪感を抱く読み手も多いだろうがそういった杭から解き放たれて倒錯的なヒロイン像、およびそこから生まれた世界観を楽しむべき作品であろう。