阿刀田高『Aサイズ殺人事件』

Aサイズ殺人事件 (創元推理文庫)

Aサイズ殺人事件 (創元推理文庫)

 2004年5月購入。3年10ヶ月の放置。刑事の佐村は難事件に遭遇し、行き詰ると碁打ち仲間の住職の元を訪れることにしている。妙法寺の住職は佐村から事件の詳細を聞くと、佐村に奇妙なアドバイスを授けるのが常であった。わけのわからぬままアドバイスされた事柄を実行し、その結果を住職に告げるや、住職は事件の真相を言い当てるのだった。
 以上のパターンでもって展開される、安楽椅子探偵ものの短編集。事件の真相を裏付けるべく、住職は奇妙な情報を求める。一見するとその情報がどのようにして事件解決の一助になるのか読者(及び佐村刑事)にはピンと来ないのだが、その情報を材料に事件の真相を明らかにしていく過程はいかにも推理小説といった手堅さを感じさせてくれ、なかなかの良作。そしてなによりも、この住職のキャラクター、仏道に励むものでありながら、男女の色事に関する機微に聡く、適度にエロさ、俗物さを発揮しているというもので、そのギャップが味があってよい。