松尾由美『安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎』
オランダ水牛の謎<安楽椅子探偵アーチー> (創元クライム・クラブ)
- 作者: 松尾由美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/10/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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基本的には衛が持ち帰った謎を、アーチーが文字通り「安楽椅子」探偵として推理、解決するという構造をとっており、安楽椅子探偵ものというジャンルとして各短編ともまずまず楽しめる出来となっている。しかし本書の特徴はそのようなジャンルそのものの出来云々ではなく、「エジプト猫の謎」で見せる淡い恋心と嫉妬の芽生えといった微笑ましい要素や、「アメリカ珈琲の謎」でのアーチーの推理に頼るだけでなく、自ら謎を解こうと行動する自立心を見せるなど、衛という少年の成長を綴る話として成立している点にある。この場合探偵役のアーチーはミステリというジャンル内におけるポジションとは別に、衛を見守る保護者や教師役といった役割を果たしている。一少年の成長小説として、続きを追いかけていきたくなるシリーズだ。