樋口有介『ともだち』

ともだち (中公文庫)

ともだち (中公文庫)

 基本的なストーリーラインはいつもの樋口作品と違わない。主人公の周囲で起こる事件、そしてその事件に巻き込まれ、被害者となる友人。主人公は犯人探しを始め、その過程で被害者となった友人の意外な側面を知ることととなる……
 本書はこの基本構造にラノベ風のキャラ設定を加えてみせる。主人公は女子高生にして、剣術の達人。被害者は学校内一の美女。探偵行為パートナーには不思議な魅力のある同級生(男)に主人公を慕う大金持ちの後輩お嬢様、さらには老いてなお(性的な意味で)お盛んな祖父、といった具合に。さらには、ほのかにではあるがユリっぽさを匂わせており、これらの設定・演出により通常の柚木シリーズに代表される樋口作品と同じようで微妙に異なる肌触りの作品として仕上げている。大袈裟にいえば挑戦的な作品といえるが、こういった戯画化はこの作者に対して望むところではないので、柚木シリーズ等と比べるとやはり一枚落ちる評価とならざるをえない印象だ。