田中芳樹『薬師寺涼子の怪奇事件簿 水妖日にご用心』

水妖日にご用心―薬師寺涼子の怪奇事件簿 (ノン・ノベル)

水妖日にご用心―薬師寺涼子の怪奇事件簿 (ノン・ノベル)

 アニメ化も決まった薬師寺シリーズの最新作。来日した南アジア某国王子が巨大テーマパーク貸切で遊んでいたところ、半魚姫に扮した美女に襲われた。背後には某国の内紛が関係しており、一行はそれに巻き込まれるかたちに。さらにその半魚姫は警視庁に乗り込んできて、薬師寺涼子に対決を迫るのだった。
 痛快さと軽快さが売りのシリーズだが、今作では薬師寺涼子の暴れっぷりがもの足りない感があった。さらに「マンガしか読まない外務大臣」のような時事に即したネタキャラを毒たっぷりに登場させているのだが、本編の展開そのものとは密接なかかわりがあるわけではなく、かえって軽快さをスポイルさせている。こういった現実に対する批判めいた毒を盛り込むのも作風のうちではあるのは承知しているが、結果として作品の完成度を下げる効果しか産んでいない。もっと軽みに徹してもらいたい。