宗形キメラ『ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子』

ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子 (講談社ノベルス)

ルームシェア 私立探偵・桐山真紀子 (講談社ノベルス)

 2007年11月購入。1ヶ月の放置。本格理解者と無理解者の夢の共演。姪がネットで見つけてきたというだけで名前以外ほとんど知らないルームメイト。彼女の行方を調査をするうちにその内面は次第に浮き彫りになっていく。この行方探しが物語の主軸となっているのだが、人間の外面と内面の違いという点が終始言及されているのが特徴。化粧品会社という、外面を強調するところが舞台となったり、あるいは主人公には愛想がいいが、裏の顔があるヤクザ、何よりも主人公の桐山真紀子自身が離婚したにもかかわらず仕事における外面を意識して結婚時の姓を名乗っているなどなど。これはテーマレベルにおいては現代の人間関係の象徴を扱っているともいえ、さらにそのテーマはトリックレベルにおいても重要な要素となっており、なかなかの力作といえる。
 また、一部読者の身を悶えさせるゲドババァクオリティも健在で、失踪女性が壁に残した罵詈雑言の落書き、「クルクルパー!」とか「デベソ!」とか「ノウタリン!」などといった語彙はサスガです。女性の一人称という心理面の描写、あるいは化粧品に関することなどはおそらく千澤のり子が担当したのだろう。一方で二階堂黎人は自分の色も失うことなく個性を発揮しているわけで、合作することの意義は間違いなくあった。