柳広司『聖フランシスコ・ザビエルの首』
- 作者: 柳広司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/10/07
- メディア: 新書
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
以上のコンセプトで書かれた連作短編で、設定上、幻想ミステリの体裁をとることとなる。彼の意識が訪れた場所はザビエルのすぐ間近であるのだが、訪れるごとにザビエルの年齢は若返っていく。最終的にはこのザビエルの若き日のトラウマに迫ると同時に修平自身のそれにも触れることになる。遠い過去のザビエルと現在の自分をリンクする形で進む構造自体は端整で、かつ史実に関する解説も簡にして要を得ており物語そのものの興を殺ぐこともない。そこで巻き起こる謎自体もややあっさりめであるとはいえ、悪くない。ただし、本来の構成上、あくまで幻想ミステリという土台で展開されていくため、最終的に「ザビエルの首」がなんだったのか、あるいは修平を見舞った現象はなんだったのか、という点においては本格ミステリ的な着地点は得られない。もちろんそのこと自体は欠点とはなりえないのだが、期待のしどころを間違うと肩透かしな印象になるので注意されたし。