乙一『ZOO』1、2

ZOO 1 (集英社文庫)

ZOO 1 (集英社文庫)

ZOO 2 (集英社文庫)

ZOO 2 (集英社文庫)

 2006年5月購入。1年半の放置。乙一は広角打法の使い手で、作品によって振り幅が非常に大きい。巷間いわれるところの黒乙一・白乙一という表現でわかる通り、時に心温まるような切ない泣かせる物語、時に残酷なラストが待ちうける悲しい物語、筆の振るい方ひとつで様々な読後感を読者に与える。本書では乙一作品におけるそのような多面性を十二分に見ることができる。母に愛される姉と虐待される妹の話や謎の人物に監禁された姉弟の話、ハイジャックされた機内で安楽死の薬を売りつけられる話などなど……一風変わった独特な設定を用い、そこから転がっていく物語の着地先は白い方か黒い方か。どちらにせよ、巧みなストーリー運びで読者を満足させること請け合い、乙一の魅力を多角的に堪能できる短編集だ。