三津田信三『蛇棺葬』

蛇棺葬 (講談社ノベルス)

蛇棺葬 (講談社ノベルス)

 2003年9月購入。4年2ヶ月の放置。三津田作品を読むのは本書で3冊目だが、これまでに抱いた作品の印象は「ミステリとホラーのハイブリット」だ。本書もその印象どおりの作風で話は進んでいくが、そのウェイトは明らかにホラーよりである。作中で起きる不可思議な事象は、主人公の推理という形で一応の解決は見るもののその推理はあくまで恐怖体験をした自分自身を無理やりに納得させるという類のもので、推理を聞く関係者ならびに読者は主人公の説明ですべてが腑に落ちるわけではない。また、関係者や読者以上に推理を披露した張本人がそれで解決=恐怖からの解消による日常的安心感を得られることがない。したがって得られる読後感はホラーを読んだ際のそれである。どうやら続編もあるようで、それによって本書の印象も変わってくるのかもしれないが、現時点では日本的土俗ホラーの佳作という位置づけが妥当か。