本格ミステリ作家クラブ編『本格ミステリ０７』

本格ミステリ07 2007年本格短編ベスト・セレクション (講談社ノベルス)

　２００７年５月購入。５ヶ月の放置。今年はなかなかの佳品揃いだが、中でも評論２作がよかった。福井健太は本格ミステリを「事件」「捜査」「不完全なデータに基づく仮説」「最終的な推理と解決」という４つのパーツに分解した上で、これらの組み合わせ次第で多様な作品が生まれること、及びそのことが今後の本格ミステリの発展の鍵になりうることを示した。巽昌章は伝説の雑誌「幻影城」を本格ミステリ史における歴史的位置づけを行っている。両評論どちらも素晴らしいが、視線が未来と過去というまったく逆に向けられている。０７年という現時点での本格の立ち位置を考える上では時間軸が双方向でフォローされているわけで、この２作品収録はナイスチョイスだと思う。