尾崎諒馬『思案せり我が暗号』
- 作者: 尾崎諒馬
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/06
- メディア: 単行本
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本格ミステリ的要素がふんだんに盛り込まれている作品であるが、何度解読しても真相の見えてこない複雑な暗号が最大のウリで、それだけでお腹一杯になれる。例えばダイイング・メッセージのように作中に暗号を盛り込むミステリ作品は多いが、それが本書のようにメイン・ディッシュとして終始前面にクローズアップされている作品は珍しかろう。もちろん、暗号だけでなくメタ的趣向を用いたり、(読者に対して十分な説得力を有していないにせよ)「完全な密室」などというハッタリのきいたモチーフを持ってきたりと読みどころはたくさんある。横溝正史賞の選評では文章力を含めて小説としての構築が甘いということで、作品そのものの出来はさほど評価されていないようだが、読みどころさえ間違えなければかなり楽しめる作品でもある。