恩田陸『ロミオとロミオは永遠に』

 2002年11月購入。4年10ヶ月の放置。恩田陸といえば読者にノスタルジーを感じさせるのに長けた作家である。その恩田が近未来SFを手がけると、ノスタルジーの対象が現代になる。舞台となるのは20世紀的な娯楽がすべて禁じられ滅ぼされた時代。大東京学園に入学したアキラとシゲルはきわめて閉塞的かつ抑圧的な学園生活を送る破目になる。また、学園内のクラブ活動には裏があり、禁じられた20世紀的娯楽――サブカルチャーを秘かに発掘していた。本書を読むことによって、「今現在に懐かしさを感じる」という不思議な感覚を味わうことができる。恩田作品の中でも一風変わった味わいのある出来だ。