アルベール・ロビダ『20世紀』

20世紀

20世紀

 2007年5月購入。4ヶ月の放置。SF黎明期の19世紀に、20世紀を描いた作品。舞台となっている1950年代は執筆当事の科学技術の延長上の世界というよりは、空想の翼を羽ばたかせてこうあってほしい、というような理想像に近い姿となっている。21世紀に生きる我々から見ると固定電話とテレビの合いの子のようなテレフォノスコープという機械などは非常に牧歌的な印象を受ける。また、法律の概念も厳密な現代と比べると非常におおらかで、婚姻届に自分の名前をわざと読みにくくサインしておき、万が一離婚したくなったらそのサインを元に別人と言い張ってみたり(しかもそれで離婚が成立してしまう、というよりそもそもの結婚を無効化できる!)、弁護士の力量は法知識や弁論ではなく、法廷での演出力であったりする。
 注目すべきは主人公が女学校を卒業したての少女であることだ。ロビダは女権の概念の乏しい時代に女性の就職、転職を焦点を当てた作品をものしているのだ*1。また、この少女とは別に政治の描写においても男性党、女性党という形で男女同権を描いている。こういった社会性に注目して未来像を作り上げた作者の慧眼には敬意を表したい。

*1:もっとも、物語は最終的に女性の幸せは結婚というがごとき結びとなっている。時代の限界と言うものは存在するということか。