茅田砂胡『デルフィニア戦記 第Ⅰ部 放浪の戦士』1〜4

 4冊まとめて。

放浪の戦士〈1〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)

放浪の戦士〈1〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)

 2003年1月購入。
放浪の戦士〈2〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)

放浪の戦士〈2〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)

 同2月購入。
放浪の戦士〈3〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)

放浪の戦士〈3〉―デルフィニア戦記 第1部 (中公文庫)

 同3月購入。 同4月購入。4年以上の放置。王でありながら庶子であると言う理由で国を追われた男・ウォルは監禁されている養父を救うため、玉座の奪還を目論む。しかし自分を追放したペールゼン侯爵の手の者がウォルの行く手を阻む。屈強な戦士たちによって追い詰められていくウォルであったが、偶然居合わせた少女が彼の危地を救うのだった……
 基本軸となるのはウォルの王座奪還のストーリーで、そこにリィという少女が相棒として絡んでいく。このリィという少女、心は男、姿は少女というバーローっぽい設定であるのだが、そのような異形であるのはリィ自身が異世界の住人であるかららしい。この世界で居場所のないリィはとりあえずウォルを助けることにするのだが、当然元の世界への望郷もある。ウォルが本来持っていた玉座を失ったのと同様、リィは故郷を喪失した。物語の根底にはこの「失ったものを取り戻す」というベクトルが存在し、基本軸のウォルのみならず相棒のリィの存在によって二重に強化されている。もっとも、リィの方はこの第Ⅰ部の段階ではさほど進展はない*1
 また、基本軸の王座奪還物語であるが、設定の似ている『アルスラーン戦記』と比べると大軍同士の激突によって生じるスペクタクルは希薄で、戦闘は英雄譚的な個人による一騎打ちのイメージに近い。政戦略面においてもマキャベリズムの概念とは程遠く、個人の友情が優先される。一国の戦記を扱っているが、本質はあくまで友情の物語であるといえる。

*1:全巻読了してないので、この後進展するのかどうかは不明。物語のセオリーとしては進展しないはずはない、と思う。