桜庭一樹『桜庭一樹日記 少年になり、本を買うのだ。』
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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帰宅して、なにを読もうかなぁと積み本を眺めていたら、なにか急に、怖くなる。東京に戻ってきたので新刊がいくらでも手に入るのだが、いや、自分の本も出たときは新刊なのだが、新たに出る注目の本ばかり追いかけると、まるで流行りのJ−POPを消費する若者のような心持ちで読んでしまう気がして、手が止まる。
こういうことを繰り返したら、作家も読者も聞き分けがよく似通った、のっぺりした顔になってしまうんじゃないか。みんなで、笑顔でうなずきあいながら、ゆっくりと滅びてしまうんじゃないか。駄目だッ。散らばれッ! もっと孤独になれッ! 頑固で狭心で偏屈な横顔を保て! それこそが本を読む人の顔面というものではないか?
2006年11月の日記で桜庭はこう記す。膨大な本が紹介されていてそれはそれで興味深いが、個人的にはこの文章を読めただけで満足だ。読書ブログを巡回していくと、「聞き分けがよく似通った、のっぺりした顔」のなんと多いことか! 面白い本は古今東西問わずたくさんあると言うのに、なぜ同じ川の水を飲もうとするのか! 頑固で狭心で偏屈な本を読む人の顔面――そのような本読みとしてのイケメンになりたいものだ。