林泰広『見えない精霊』
The unseen見えない精霊 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)
- 作者: 林泰広
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2002/04
- メディア: 新書
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巻末インタビューでマジックが好きだと語る作者であるが、本書はなるほどマジック的だと思わせる仕上がりとなっている。写真家「ウィザード」はトリックが用いられている瞬間を写真に収めようとするのに対し、そのような観客を欺こうとするシャーマン=手品師というのが基本的な構図であるし、そもそもメインで用いられているトリックが観客の視線をコントロールすることによって成り立っている。そのトリック自体は過分に綱渡り的でありはたして実際的な成功の可否は微妙な気はするが、これを成功させる者こそ大シャーマンであり一流マジシャンであるところの大魔術師なのだろう。舞台背景、テーマ、人物設定等が巧くはまっている作品だ。
なお、作者は現在精力的に活動している石持浅海、東川篤哉と同じカッパ・ワン一期生であるが、本書発表後は沈黙したままだ。更なる新作を期待する。