樋口有介『ぼくと、ぼくらの夏』

新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)

新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)

 2007年5月購入。3ヶ月の放置。同級生の少女の死の謎を探る少年と少女の物語という、デビュー作ではあるが柚木草平シリーズに代表される後の樋口作品の典型的な構成となっている。ただし、柚木シリーズと決定的に違うのは視点人物の年齢が若いことだ。柚木シリーズが30代子持ちのおっさんの視点であるため回顧的な視点で若者たちの青春劇を眺めることになるのに対し、本書では等身大の若者の姿を見ることになる。作者の作品に共通する、ラストで待ち受ける青春小説特有のほろ苦さも、柚木作品では多分に感傷的であるのに対し、本書ではより痛々しい感がある。とはいえ作者の筆致に軽みがあるため、読後感は決して悪くない。