畠中恵『しゃばけ』

しゃばけ しゃばけシリーズ 1 (新潮文庫)

しゃばけ しゃばけシリーズ 1 (新潮文庫)

 2004年3月購入。3年4ヶ月の放置。一太郎は江戸有数の薬種問屋の御曹司だが、生来の病弱もやしっ子で外出することもままならない身だ。そんな彼がとある個人的事情で外出したある夜、人殺しを目撃してしまい、なおかつその犯人らしき人物に命を狙われる羽目になった。それどころか、更なる殺人事件が発生し、周囲は騒がしくなる。一太郎は彼の面倒を見てくれる妖怪たちと事件の謎を探ることになる。
 主人公の周囲に妖怪がかしずくことになった由来と事件とをうまいこと絡ませ、事件の謎を収束させていく手腕はなかなかのもの。また、妖怪という道具立てを前面に持ってきながら、会談・怪異譚のごときおどろおどろしさをださず、むしろひょうひょうとした雰囲気で物語を展開・描写しているのがこの作者の作風か。派手派手しさ・けれん味とは遠い所に位置し、そのような濃淡で量ると地味な部類に入るのだが、作品から生じるその淡さが心地よい。文章も読みやすくなかなかの佳作といえよう。