三津田信三『ホラー作家の棲む家』

 2001年8月購入。5年10ヶ月の放置。三津田信三は生業とする編集者としての仕事のかたわら、同人誌に怪奇小説の執筆を始める。新たな住まいを探していた三津田は偶然にも執筆にうってつけの雰囲気を持った館を発見、そこを借りることに。以降、彼の身に奇怪な出来事が起こる。身に覚えのないホラー大賞の応募原稿、ファンを名乗る謎の女性との邂逅……
 作中にメタの趣向が施されているが、いわゆる本格ミステリのガジェットとして機能するのではなく、あくまで怪奇小説における現実/非現実の境界を曖昧にさせる要素としてそれは用いられている。その点、まさしくホラー作家の棲む家で起きる事件を扱っており、雰囲気作りに大きく貢献している。また、本格ミステリにおける芸術論争に対する言及部分、とりわけ連城三紀彦が印象に残る。