都筑道夫『七十五羽の烏』

七十五羽の烏 (光文社文庫)

七十五羽の烏 (光文社文庫)

 1999年3月購入。8年3ヶ月の放置。金持ちのぼんぼんで働かずとも食うに困らない物部太郎であったが、世間体を気にした父親に何がしかの職に就くことを命じられる。一計を案じた物部の選んだ職業は心霊探偵なる怪しげなもの。心霊がらみ以外の事件はすべてお断り、仮に該当すると思われる依頼があったところで法外な値段をふっかけて追い返してしまうつもりだった。むろん、宣伝広告など出すつもりは毛頭ない。これで万事、名目上は職に就いた上で働かずとも従来どおりダラダラ過ごしていけるはずだった。ところがそこに持ち込まれた一件の依頼によって捜査に駆り出されることになる。千年前に死んだ姫君のたたりとしか思えない殺人事件の真相を探ることになったのだ。
 いわゆる本格ミステリにおけるフェアプレイ精神を遵守した作品の代表として持ち出されることのある本書だが、その点では申し分なく、そういった結構部分に価値を見出す読者には必読の書となるであろう。だが、頻出するあまりにも下品に過ぎる下ネタが興をそぐ。そもそもの小説作品としての出来はどうであろうか。