恩田陸『MAZE』

MAZE (双葉文庫)

MAZE (双葉文庫)

 2003年11月購入。3年7ヶ月の放置。アジアの西の果てに建つ、白い箱のような建立物。土地の伝承によると、その建物の中に入ると出て来れなくなるらしい。時枝満は友人の神原恵弥に頼まれ、現地でこの建物の謎を解き明かすことになる。同行スタッフは恵弥を含む3人。満は不可思議な現象が起きるこの地で真実を突き止めることは出来るのか……
 恩田陸という作家は明確さよりも曖昧さを表現することに優れている。「はるか異国の地に存在する正体のはっきりしない建造物らしきもの」など、うってつけの素材だ。作中では人を飲み込む建物の正体に対してさまざまな仮説を設けているが、それが真実であることよりもそういった仮説と仮説を検証する行為、そしてその結果によってもなおはっきりしない曖昧さ、その空気こそ読者にとっての魅力となっている。また作者は曖昧さを印象付けるために神原恵弥という男を非常に女性っぽいボーダーレスな人格として設定しているのだが、これが非常に効果的だ。