谷原秋桜子『砂の城の殺人』
- 作者: 谷原秋桜子,ミギー
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/03/10
- メディア: 文庫
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元来が登場人物の色付けに依存しながらも、本格ミステリというジャンルを真正面から見据えたシリーズであるだけに今作も本格の魅力をみせてくれる。クローズドサークルで起きる殺人事件を扱っているのだが、探偵役に立候補した人物たちが自説を繰り広げ、最終的に真の探偵役が――と言う推理合戦の構図がキャラの魅力もあいまって楽しい。
そもそも本シリーズは修矢と美波のラブコメとしての要素も強いわけだが、普段は仲が悪く反発してばかりという設定があるために、修矢は件に巻き込まれる美波とは別行動をとることになる。ミステリ的展開としては、探偵役としての修矢を事件の表舞台に立たせるのを遅らせることができ、事件のクライマックスで大トリとして登場することになり、演出上非常に便利である。ラブコメものと名探偵ものはかくも相性がよいものか、と思った次第だ。