鯨統一郎『富士山大噴火』

富士山大噴火

富士山大噴火

 2004年3月購入。3年2ヶ月の放置。北京原人の骨を巡る大事件に巻き込まれた記者の山本達也とカメラマンの天堂さゆりは婚約をした。結婚を間近に控えた二人だが、周囲では不穏な事件が相次いだ。普段おとなしい犬が突如人を襲ったり、池の鯉が飛び回ったり。天変地異の前触れか? 取材を続ける二人の耳に飛び込んできた噂はなんと、富士山噴火の可能性であった。
 軽妙さを前面に押し出した脱力系の作品を量産する鯨統一郎だが、押し迫る富士山噴火の危機と、それに立ち向かう男女の愛情という扱うテーマがテーマなだけに本書は意外にもまとも。もっともそれにしては圧倒的な緊迫感があるというわけでなく、パニック・ノベルとしては重厚さは乏しく、結果として作者の持ち味は殺され、新境地としては魅力に欠ける印象となってしまった。