桜庭一樹『竹田くんの恋人』

 携帯用ギャルゲーのキャラに過ぎないキラシャンドラがなぜか現実世界のプレイヤーの竹田くんに恋をしてしまう。同じキャラクターである水菜とともに現実世界へやってきたキラシャンドラは、竹田くんを探すことになるのだが、どうやら彼はとんでもない事件に巻き込まれているようで、おまけにその評判たるや、最悪のものであった。

 桜庭一樹ブレイク前の作品で、描かれた世界・登場人物はいかにもラノベフォーマットのもので普遍性は薄い。作者の売りである「少女」というテーマに対する掘り下げもほとんどなく、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』や『少女七竈と七人の可愛そうな大人』、あるいは作者の現時点での最高到達点とも言える『赤朽葉家の伝説』でほとばしる才能を目の当たりにした者にとっては、物足りなすぎて拍子抜けしてしまう。作者の歴史を知る意味ではある意味興味深い作品ではあるが、それ以上の意味を見出すのは難しい作品だ。