谷原秋桜子『天使が開けた密室』

天使が開けた密室 (創元推理文庫)

天使が開けた密室 (創元推理文庫)

 2006年11月購入。5ヶ月の放置。高校生の倉西美波は行方不明の父を探すための資金稼ぎをすべく、バイトにいそしんでいた。そこで持ちかけられた「寝ているだけで一晩五千円」という胡散臭い話。不幸にも多額の借金うを背負い込むことになった美波は喜んでそのバイト話に飛びつくのだが、そこで殺人事件にまきこまれてしまうのだった。

 ラノベレーベルで刊行された作品の復刊ということだが、密室の扱いやその解決法などミステリとしてはまっとうで好感が持てる。ただし、キャラクターたちには拒否反応を覚えずにはいられなかった。世間ずれしない母親、気が強く男勝りの口調でしゃべる友達(父親は警察のお偉いさん)、おしとやかでおっとり口調の典型的なお嬢様の友人(政財界のお偉方とコネクションがある)、普段は喧嘩をしてしまうけどいざというときは助けてくれるクールな隣人(男)……絵に描いたような漫画型の登場人物の造詣(描写ではない)が狙いすぎだ。特に若い主人公の前に現れるイヤな大人たちの態度は子ども/大人という壁を見せつけるための趣向にしてはあざとすぎで、むしろそういった大人たちのほうが子どもっぽいだろうと苦笑してしまった。このあたりのキャラクター造詣の面で地に足が着いてくればもっと作品自体にのめりこめるはずで、非常に惜しい。