貫井徳郎『悪党たちは千里を走る』
- 作者: 貫井徳郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/09/26
- メディア: 単行本
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本書、そして本書よりさらに半年前の作品『さよならの代わりに』の刊行を見ると、貫井徳郎という作家は従来の鬱系の路線にとどまらず、より一般受けのしやすい方向へと作風を広げんとしているのではと思わせるものがある。その『さよならの代わりに』が青春小説風でセンチメンタルな色合いの強い作品であるのに対して、本書は非常にコミカルな悪漢小説といったところ。いずれも作者の一番の売りである人間の黒さを描写することは控えられている。もっとも本書に関しては、その意欲は買うもののぎこちなさが目立つ気がする。特に弟分のチープさを演出する「アニキ、〜ス」というしゃべり口調には脱力。きわめてマイナーなたとえで恐縮だが、数年前の某打ち切り漫画の「風天組は最高ス!」を連想してしまった。