恩田陸『ドミノ』

ドミノ (角川文庫)

ドミノ (角川文庫)

 2004年1月購入。3年の放置。東京駅を舞台に、たくさんの人が関わりあいひとつの絵模様を作り出すという、一風変わった作品。大口の契約を目前にした生命保険の社員たち、オーディションを受けにきた母娘、元暴走族のピザ屋、大学推理研の若者たち、修羅場を迎えつつある恋人たち、句会のオフに参加しようとする田舎の老人、警察OB、ホラー映画監督とそのペットと通訳、テロをたくらむ過激派、テレビの人気キャスター……総勢27名と1匹の行動がさながらタイトルにあるドミノ倒しのごとく連鎖的に関わり合っていく展開の面白さ、そして多彩な登場人物、そしてそれによって生ずる多彩な視点を用いつつも読者に混乱をもたらすことなく書き分ける技術には素直に驚嘆する。そして従来の恩田とは明らかに異なる内容の作品を書き上げたことにより、作者の作風の広さを知らしめた一品となった。表立った代表作とは決して呼べないにしても、その陰に隠れた佳品としてファンに愛されそうな作品だ。