柄刀一『殺意は青列車が乗せて』

 2004年2月購入。丸々3年の放置。IQ190の天才・天地龍之介を探偵役にすえたシリーズの第5弾。短編5本が収録されているのだが、それぞれの章題に色を表す言葉を用いて統一感を出しているものの、各作品の事件そのものはそれぞれ独立したものだ。本格ミステリ志向のきわめて高い作者だけあって格作品ともそれなりに趣向が凝らされており面白いのだが、そもそも本シリーズを継続させる(作者にとっての)必要性があるのだろうか。と、いうのは天才的な探偵というキャラクターを重視している点や、やや控えめではあるが漫画調のラノベを意識しているかのような表紙・挿絵。こういった特徴の元に売り出すには柄刀一と言う作家の書く文章には軽みが足りないし、むしろ重厚感あふれる作品のほうが持ち味が活きるように思われるからだ。結果として非常にバランスの悪い読み心地を味わうことになる。それでもシリーズ続編は出ているようだし、それなりに受け入れられてはいるのだろうけど。