宇月原晴明『安徳天皇漂海記』

安徳天皇漂海記

安徳天皇漂海記

 壇ノ浦の戦いに敗れ入水した安徳天皇フビライ・ハーン統治の大元帝国によって滅亡した宋の皇帝趙ヘイ*1。場所も時代も異なる二人の亡国の少年皇帝を、とびきりの奇想で以て邂逅させて見せた傑作。作中に挿入された「平家物語」の通低音がなんともいえない物悲しさ、無常感をかもし出すのに一役買っている。読了したのは昨年であるが、本書はその昨年読んだ本の中ではぶっちぎりの面白さであった。

*1:日偏に丙