辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ』上下

子どもたちは夜と遊ぶ(上)

子どもたちは夜と遊ぶ(上)

子どもたちは夜と遊ぶ (下)

子どもたちは夜と遊ぶ (下)

 2冊まとめて。ともに2005年5月購入。1年7ヶ月の放置。慕っている狐塚の後を追って同じ大学に入学した月子。狐塚の親友、浅葱と恭司。iと名乗る殺人鬼とその相棒θの手による連続殺人事件が彼らの周囲で起きていく。デビュー作同様作者の視点は殺人事件やその犯人当てといった、作者自身影響を受けたという綾辻行人的な本格ミステリ要素にはあてられていない。代わりに事件に巻き込まれた人々(加害者も含む)の心情を描くことに筆を費やしている。登場人物はタイトルにあるように「夜に遊ぶ子どもたち」にたとえられているのは明白で、主人公の一人が「月子」の名を与えられていることは非常に象徴的だ。この月子という女性の作中での役割はまさに夜を照らす月のようだ。彼らはその明るさ、けなげさに励まされたり、あるいは彼女に愛されていないという思い込み暗く沈む。これに関しては処理の仕方があざとすぎるきらいはあるがそれなりに効果的でもある。