高田崇史『QED〜ventus〜 熊野の残照』

QED ~ventus~ 熊野の残照 (講談社ノベルス)

QED ~ventus~ 熊野の残照 (講談社ノベルス)

 2005年8月購入。1年2ヶ月の放置。本シリーズは歴史を弱者や敗者、あるいは日陰の存在にあるものに焦点を当てることによって浮かび上がってきたある事象――現代では常識と言われるものと異なった風習・視点・思考法など――を現実レベルで起きた事件の背景に重ね合わせることによって事件を解決に導く、という方法論がとられている。当然、その重ね合わせが密接であればあるほどミステリとしての完成度や破壊力は増すわけで、本書はその意味では高レベルなミステリ作品になっているといえる。例によってタタルと奈々といういい年をした男女のカップルの煮え切らなさをニヤニヤと生温かく見守っていると*1、最後にガツンとやられてしまう。

*1:特に本書は通常の奈々視点ではなく、第3者の視点であるのでこの手の見方に偏りがちとなる