大場つぐみ・小畑健原作 西尾維新著『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

 少年ジャンプに連載され、映画化、アニメ化も決定している超人気コミックのノベライズ版。しかもノベライズを担当したのが西尾維新ということで注目の1冊だ。原作の主人公・夜神月でなく、ライバルであるLにスポットを当てているのだが結論だけ先に言えば少なくとも成功作とは言いがたい作品である。
 作品内容に関して言えばその原作を巧みに料理して高水準のミステリに仕立て上げたといえる。
 しかし、そもそも人気作品のノベライズである以上、本書には原作の影が色濃く付きまとうこととなる。必然的に作者は強固に確立された原作のイメージを壊すことなく、なおかつ自身の作家としてのアイデンティティを主張しなければならないという難度の高い作業を求められることとなる。その西尾の個性といえば「饒舌すぎる語り手による一人称」が思い浮かぶが、本書もその手法を用いている。これが上述した「原作のイメージを壊すことなく」の部分に抵触するように思えてならない。あるいは『赤ずきんチャチャ』といったオタク的アイテムの投入も原作のイメージとは大きく食い違う。
 こういった指摘は『ロサンゼルスBB連続殺人事件』という作品の単独的な価値とはまったく別個のものと捕らえることも可能だろう。それでもノベライズという形式の作品であり、かつそれなりに売れっ子である小説家のコラボという観点での見方を捨てきれない一読者としては単純に長所を賞賛するだけで済ませることのできない、違和感というか腑に落ちなさを感じざるを得ない。