桜庭一樹『少女七竈と七人の可愛そうな大人』
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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以下、本書『少女七竈と七人の可愛そうな大人』及び『荒野の恋』シリーズをネタバレ気味に。
本書を鑑賞する上で、同じ作者の『荒野の恋』シリーズとの対比が有効であるように思える。両者は表裏の関係にあるからだ。
実の母とのコミュニケーション喪失に悩む七竈と、義理の母ともうまくやっていけている荒野。そして戸籍上は他人だが、血縁的にはつながりのある七竈と雪風に対し、父の再婚により戸籍上は兄妹になった荒野と悠也。「恋愛」と「家庭」いう二つの要素が綺麗なまでに対照を成している。また、最終的に実らなかった七竈の「恋(のようなもの)」の結末に対し、まだ最終部は発表されていないが「恋」の結末に対して前向きな『荒野の恋』。両者の「恋愛」に対するベクトルは間逆である。
『荒野の恋』が甘酸っぱく、恋の成就を目指している作品だが、この『少女七竈と七人の可愛そうな大人』は恋の喪失がテーマの一環をなしている。そしてそのテーマは少女から大人への成長から生じたものでもある。この一人の少女の成長を描いた、という部分が本書の読みどころだ。そしてその成長こそ、大人になることであり、大人になるということは本書でいうところの「可愛そうな」存在の仲間入りをすることでもあり、そうである以上、なんともほろ苦い作品でもある。