東川篤哉『密室に向かって撃て!』

密室に向かって撃て! (カッパ・ノベルス)

密室に向かって撃て! (カッパ・ノベルス)

 2002年10月購入。3年9ヶ月の放置。傷害事件の犯人の下から見つかった改造拳銃。二人の刑事はその拳銃の回収に失敗する。後日、大富豪の十条寺邸で、その拳銃を使ったと見られる事件が発生する。撃たれたのは名探偵の鵜飼杜夫。彼は十条寺家の一人娘・さくらの婿候補の身辺調査の依頼を受けており、その結果を報告に来ていたところだった。さらには婿候補の一人が銃殺されてしまう……

 「烏賊川市シリーズ」第2弾ということで、前作同様のユーモアとギャグに彩られた作品だ。それも、多くの本格作品に欠点としてあげられる「間抜けな刑事」とか「間抜けなワトソン役」といった存在それ自体をギャグとしてみせ、しかも決して自虐的ではない、本格の特性自体もギャグにしてしまう潔さにあふれている。
 ――などという見当違いな持ち上げ方をせずとも、作者のサービス精神を素直に楽しむのが正解であろう。また、残りの銃弾と銃声の数を検証するくだりで本格の面白さも堪能できたりするので、そのあたりを考慮すると、この作者はギャグと本格ミステリのバランス感覚が抜群に優れているといえる。