近藤史恵『南方署強行犯係 黄泉路の犬』

 2005年9月購入。10ヶ月の放置。無愛想でクールな女性刑事・黒岩と新米刑事・圭司のコンビによる警察小説のシリーズ第2弾。強盗の被害にあった女性のもとからいなくなった1匹のチワワ。どうやら金品と一緒に持っていかれてしまったらしい。チワワを探す黒岩たちはやがてある人物にたどり着く。驫木というその女性は捨てられた犬猫を引き取り、場合によっては彼らの次の飼い主を見つけてあげたりしていた。しかし、驫木のもとにいると思われたチワワは見つからず、それどころか驫木自身が死んでしまう。彼女の死は自殺か、あるいは殺人か。そしてチワワはどこに……

 動物愛護という美辞麗句に隠された「アニマル・ボーダー」という実態。そこに潜む心の闇を描いた作品で、作者の筆は作品を通して人間のエゴを見せつける。読んでいてやりきれない思いにとらわれるのだが、一方で圭司の家族や彼の拾ってきた猫、あるいは黒岩と甥っ子の逸話などを組み込むことによってただ冷え冷えとしたストーリーに終始させるのではなく作品に温かみを加えている。この温度差による舵取りの妙こそが本書の読みどころであろう。