近藤史恵『南方署強行犯係 黄泉路の犬』
- 作者: 近藤史恵
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/09/21
- メディア: 新書
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動物愛護という美辞麗句に隠された「アニマル・ボーダー」という実態。そこに潜む心の闇を描いた作品で、作者の筆は作品を通して人間のエゴを見せつける。読んでいてやりきれない思いにとらわれるのだが、一方で圭司の家族や彼の拾ってきた猫、あるいは黒岩と甥っ子の逸話などを組み込むことによってただ冷え冷えとしたストーリーに終始させるのではなく作品に温かみを加えている。この温度差による舵取りの妙こそが本書の読みどころであろう。