関西徘徊録
一泊二日の強行軍で関西方面へ行ってきた。初日は大阪で古書店巡り、露天神(=お初天神。近松『曽根崎心中』の元ネタとなった情死事件の舞台)、そして飲み会。FOOLさん、すずるさんご夫妻、SAMANAさん、わったんさんといった方々といろいろ語る。
二日目は京都へ。FOOLさん、すずるさんご夫妻の案内で観光。さすがにゴールデンウィーク真っ只中ということもあって混雑していたが、行ったことのある有名どころを避けたので意外とスムーズに進んだ。以下、見て回ったところを『都名所図会』を引用しつつレポを。
- 作者: 市古夏生,鈴木健一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1999/02
- メディア: 文庫
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東山泉涌寺は大和大路一の橋の東にあり。当寺の初めは弘法大師の開基なり。その後、文徳帝の御宇斉衡三年に左大臣緒嗣公、再建あって天台宗となし、仙遊寺と号す。この山に仙人遊びしゆゑなり。中興の開山は俊芿法師、号は我禅。それより以来、天台・真言・禅・律の四宗を兼学す。当山の麓に霊泉涌出しければ、号を泉涌寺と改む。
まずは泉涌寺へ。初めは仙人が遊んだちに建った寺なので「仙遊寺」、後に泉が涌いたので「泉涌寺」となったらしい。
天子の官寺となることは、八十六代四条院を権輿とせり。この帝降誕のとき、「我禅、我禅」と宣へり。俊芿我禅和尚再生して天子の位に昇り、四条院と出誕したまふよし、人の夢に見えけるとぞ。これより以来代々の帝、当山へ葬り奉る。
四条天皇(1231−42)が生まれた際に「我禅、我禅」と言ったということから中興の祖俊芿我禅の生まれ変わりだとい噂が流れる。以降、歴代天皇の山陵が当寺に営まれるようになり、皇室の菩提所となる。
この楊貴妃観音像がちょうど特別に展示されていた。
- 珍皇寺
次に向かったのは六道珍皇寺。
篁堂には小野篁の像を安置す(このところより冥土へ通ひし道なりとぞ)。
小野篁像が安置されている篁堂の奥には冥土に通ずるといわれる井戸があるが、遠くからしか見ることが出来なかった。また、この近辺はかつて死者を鳥辺野へ葬送する際の野辺送りの場所であり、この世とあの世の境といわれていた。この地は「六道の辻」と呼ばれている。
- 六波羅密寺
次は六波羅密寺へ。
伝に曰く、村上帝御宇天暦五年に疫癘流行りて死するもの数しらず。空也上人これを憐れみたまひ、十一面観音の像を作りて車に乗せ、洛中を自身牽きありきたまふ。これ当寺本尊なり。観音に供ずる典茶を疫人にあたへたまへば、一同に平癒す。村上帝これを聞こし召して吉例とし、毎歳元三に服したまふ。万民、いまこの例を行ふて名を王服と号し、年中の疫を免るるとなり。
とあるように、空也上人開基の寺として有名。空也上人蔵、平清盛座像等でも知られている。
下御霊神社は京極通り春日の南にあり。祭る神は八所の御霊にして上御霊と同神なり。
下御霊神社の項には上記のごとく書かれており、上御霊神社に祭られている「八所の御霊」とは早良親王・伊予親王・藤原夫人・文太夫・橘逸勢・藤原広嗣・吉備大臣・火雷神だ。それぞれ、簡単に説明する。
早良親王……長岡京造営における工事の責任者の藤原種継を暗殺したとして幽閉される。
伊予親王……平城帝の時代に謀反を起こそうとしたかどで死を賜る。
藤原夫人……伊予親王の母。同上。
文太夫……文屋宮田丸。仁明帝の時代(承和10年)に謀反を企てたとして伊豆に流される。
橘逸勢……承和元年に謀反を企てたとして伊豆に配流。三筆の一人として知られる。
藤原広嗣……天平12年大宰府にて謀反を企てる。
吉備大臣……吉備真備。恵美押勝の乱を平定するなど功は多い。晩年に政争に敗れたことが御霊に加えられた原因か。
火雷神……菅原道真。藤原時平の讒言により大宰府に左遷された、わが国最大の御霊。
- 六角堂
六角堂。名前の由来は本堂が六角形だから。聖徳太子の開基として知られる。
池坊の立花(当坊住職の中、専慶。立花を愛し木立ち興あるをば食をわすれてもとめ、深山幽谷のさかしきをもいとはず尋ねあるき、その心、切なるを当寺の本尊感じたまひ、立花の秘密を霊夢に授けたまふ。これより代々その伝をつぎ、中興また専好といひしよりそのその風を改め、家元とす。
また、六角堂の一坊たる池坊は華道発祥の地としても知られている。すぐ裏には豪奢な池坊ビルが建つ。
神社仏閣めぐりはこれにて終了。最後に京都駅の伊勢丹で開催されている「北京故宮博物院展」を見る。浅田次郎『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』の世界を理解するうえで非常に役に立つイベントだ。
とまあ、あわただしい関西行だったが非常に楽しいものであった。観光はもちろんだが、ミステリ語りがえらく盛り上がったのが印象深い。私の都合に合わせてわざわざオフ会及び観光案内をかってでてくれたFOOLさん、すずるさんはもちろん、飲み会でのトークを盛り上げてくれたSAMANAさん、ものすごい量の本を進呈してくださったわったんさん、皆様に感謝申し上げます。また行きたいなあ。