浅暮三文『ダブ(エ)ストン街道』

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

ダブ(エ)ストン街道 (講談社文庫)

 2003年10月購入。2年半の放置。突然いなくなった恋人タニヤから届いた一通の手紙。その手紙によると彼女はダブ(エ)ストンという土地にいるらしい。「私」はその手紙と『赤道大全』という書物に記された記述をもとに謎の地ダブ(エ)ストンへと向かう……
 ダブ(エ)ストンは謎の多い土地だ。場所すらはっきりとわからないし、さらにそこは迷い込むと一生出られない所だという。ところがタニヤを探しに行った「私」はダブ(エ)ストンにたどり着くことができたし、そのダブ(エ)ストンでは彼女を見つけるヒントを得るために目的とした場所に到達することもできた。また、砂漠で迷いつつもオアシスを発見できたりもする。もちろん、そこに行き着くまでには紆余曲折ある。しかし、決定的に迷いさまようわけではない。ただその目的地やそこで会う人間からなかなかタニヤに関する情報が得られないというだけだ。いわば「場所」に迷うというよりは捜し求めるタニヤという「人」に迷うともいうべき状況に主人公は置かれている。この状況がいわくいいがたい感覚を読者にもたらす。
 本作はメフィスト賞受賞作であるが、ファンタジーノベルズ大賞受賞作のような作品だ。森博嗣清涼院流水よりも酒見賢一佐藤亜紀と並んでいたほうがしっくりくる。