井上雄彦『バガボンド22』

バガボンド(22)(モーニングKC)

バガボンド(22)(モーニングKC)

 吉川英治の原作小説は未読*1である。したがって本書の構成・内容、特にキャラクターの設定が原作に忠実なものなのか、あるいは井上によるアレンジがあるのかは判断不能である。その前提のもとで以下記述する。


 『バガボンド』における武蔵をめぐる登場人物の配置は二つの軸によって成り立っている。

 一つ目は武蔵のライバルたちによって形成される横軸だ。吉岡兄弟、胤舜、佐々木小次郎といった面々と戦うことを通して剣士として成長するのに用いられる。

 もう一つは縦軸――人としての武蔵を教え導く立場にある人物の配置だ。胤栄、柳生石舟斎、そして沢庵和尚などだ。この軸をさらに延長して武蔵がやがて教え導くであろう城太郎少年を置くことも可能だ。横軸が剣士武蔵の成長に必要な人物を象徴するならば、縦軸は哲学者としての武蔵を形成させるのに必要不可欠な人物を表しているといえる。

 ちなみに又八は横軸のゼロ、おつうは縦軸のゼロに位置する人物としてとらえるのがよかろう。

 最新刊の本書では横軸に配置される新たなキャラクターとして本阿弥光悦が登場する。この人物との出会いが武蔵に何をもたらすのか今後が楽しみだ。それにしても井上は師匠筋に当たる人物を描くのが抜群に巧いなあ。『SLAM DUNK』の安西先生とかもそうだし。

*1:何年か前に買って放置中。