鮎川哲也『沈黙の函』

 2003年3月購入。約3年の放置。光文社鮎川哲也コレクションの掉尾を飾る本書は作者の趣味であるレコード収集を活かした作品となっている。事件の背景がそういった世界に限られているせいか、警察の捜査によって展開するシーン――容疑者がまったく異なる人物に変わったり、証拠や証言によって事件の構図ががらりと変わったりするといったような――も他の作品に比べると狭く感じる。逆に言えば、事件の中心にあるレコード関係の話に焦点が絞られているわけだから、その方面を楽しめばよいわけだ。