荻原規子『西の善き魔女Ⅲ 薔薇の名前』
- 作者: 荻原規子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/02/01
- メディア: 文庫
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上で書いたように、物語以前のフィリエルの生き方と以降のそれとの違い、そしてどちらの生き方を自分が望んでいるのか、という葛藤に対してフィリエル自身が一つの結論を導き出すことなる。その選択によってこのシリーズが王宮を舞台として華麗でありながらも、しかし陰では陰謀劇が繰り広げられるという暗さを持った王位継承争いに主眼を当てた物語になるか、あるいはそれら従来のヒロイック・ファンタジーとしては王道である部分を捨てた一組の少年少女の愛を主軸においたビルドゥングス・ロマンになるかが決定する。まさに物語のターニングポイントとなる巻だ。なお後者がストーリーの主幹となった場合に、セカイ系の文脈で読みとれるかどうかは結末を読むまでは判断しかねるところだ。