宮城谷昌光『子産 下』

子産(下) (講談社文庫)

子産(下) (講談社文庫)

 ということで下巻。子産という人物は孔子が敬愛した礼の遂行者だ。また、古代中国という時代にあって唯一、民の意見に耳を傾けた人物だという。権力の座についてからの子産は周囲の反発にあいながらも改革を推し進めていくき、結果を出す。現代日本の政治家には自分を投影するには大変都合のいい人物だ。ただし、その姿勢だけ真似ても結果はついてくるとは限らないが。少なくとも、自己陶酔の気配ぷんぷんの某総理には読んで欲しくないと思う。

 それはさておき、宮城谷が春秋戦国時代を書く作法は偉大なる先達司馬遼太郎のそれと酷似する。すなわち、その時代の各人物に焦点を当てた作品を多数書くことによって、時代の空気を浮き彫りにするというものだ。司馬は明治維新を中心にした時代をこの方法で書ききった。宮城谷も同様に春秋戦国を書ききろうとしている。この子産を始め、重耳、晏子楽毅、士会、孟嘗君……次はいかなる人物によって時代を浮き彫りにしていくのか非常に楽しみだ。