佐藤賢一『二人のガスコン(中)』

 昨日に続いて中巻。鉄仮面の謎を探るダルタニャンとシラノ。二人にはそれぞれ愛する女性がおり、その女性のために奮闘するのだが報われない。ここら辺のいわゆる愛情のすれ違いはベタだが読ませる。愛する女のために必死に頑張る男という人物造形は佐藤賢一お得意のものだが、ここでもそれは健在。男って生き物は愛する女のために力を尽くす生き物のだよ。
 前巻で見られたダルタニャンとシラノの対比だが、それまでの対立姿勢から共闘体制へとシフトしていく。ここら辺の、特にシラノのダルタニャンを見る姿勢の変化が見所。ここもベタだがやはり読者の男心を熱くさせる。
 対比という点ではもうひとつ、新聞記者のクルパンの登場によって武人ダルタニャンと文人クルパンという構図も生まれる。戦場に生きてきた前者が人を見るのにシビアであるのに対し、新聞記者ゆえ弁が立ち小生意気なことを言う後者は修羅場を想定した冷徹さを持ち合わせることができない。この異なる2者の対比という作法はキャラクターの性格を際立たせるのに有効で、そういったテクニックを学ぶ上では絶好の教科書になりうる作品でもある。