佐藤賢一『二人のガスコン(上)』

二人のガスコン〈上〉 (講談社文庫)

二人のガスコン〈上〉 (講談社文庫)

 2004年7月購入。1年4ヶ月の放置。ヨーロッパを舞台とした冒険活劇を書かせれば当代一の佐藤賢一現代日本のデュマと呼ぶにふさわしい書き手だ。その佐藤賢一がダルタニャンを主人公にして描いた「鉄仮面」の物語。
 ダルタニャンのパートナーを務めるのは三銃士でなく、シラノ・ド・ベルジュラック。巨大な鼻の持ち主で、無頼の詩人気取りの男だ。このシラノとダルタニャンの対比が絶妙で、かたや宮廷に使える密偵、かたや宮仕えなどくそくらえの自由人。官人のダルタニャンは辛抱強く、上司のマザラン枢機卿には従順だが、シラノにはそのような権威は通じない。
 ところが、中盤のある事件でキレるべきでないダルタニャンがマザランにキレ、シラノが止めに入るという性格設定をひっくり返したシチュエーションを持ってくるのだ。そのことによって二人の対比がいっそう際立つ。お見事。現段階で下巻まで読み終えていないのだが、面白かったのでいったん感想を上げておく。